ハラスメントを受けて誰にも相談せず何もしなかった理由と対処方法

はじめに
ハラスメントを受けた後の労働者の行動や勤務先の対応について、厚生労働省の調査があります。誰かに相談した人と何もしなかったでは、パワハラ・セクハラ・顧客からの著しい迷惑行為等(以下カスハラ)のいずれのハラスメントにおいて「何もしなかった」が最も高い(パワハラ36.9%、セクハㇻ51.7%、カスハラ35.2%)です。
労働者からの相談や周囲の報告等により、ハラスメントを受けていることを認識した後の勤務先の対応で、パワハラ・セクハラは「特に何もしなかった」がもっとも高く(パワハラ53.2%、セクハラ42.5%)、カスハラでは「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談に乗ってくれた」が高く(39.2%)、その次に「特に何もしなかった」が高い(29.8%)とあります。
ハラスメントを受けて、会社の上司や同僚、友人等に相談したりすることなく、何もしなかった人はなぜ相談しないのか考えてみました。相談したが会社がなにもしてくれなかったとき、その後労働者はどうしたのかも気になります。一人でくよくよ考えて、メンタル不調になり、身体に症状が出ない前に何とか止める方法を考えてみました。
ハラスメントを受けて誰にも相談しないのは何故
①何をしても解決にならないと思ったから。(これは統計に記載されていた理由です。パワハラ65.6%セクハラ52.7%、カスハラ56.1%)
②加害者が怖い。更にハラスメントがひどくなり報復される。
③職場に迷惑が掛かる(職場に悪影響を与えることを懸念)。
④ハラスメントを受けたことを他人に知られることが恥ずかしいと考える。
⑤誰かに話したことで噂になり、会社にいづらくなる。またその周囲の評価に対して更に自分が傷つくことを恐れる。
⑥周囲の人や会社を信頼していない場合、相談することに抵抗を感じている。(以前他の人が相談して、プライバシーが守れなかったこと等があると猶更相談し辛い。)
⑦仕事を失うリスクや今後のキャリアへの悪影響を恐れるためにそれを避けるため。
⑧受けたハラスメントの内容にもよりますが、自分で解決できるメンタルの強さを持ち、誰にも相談しない人もいますし、他人に頼ることをためらう性格の人もいます。
このように拾い上げてみると殆どは自分を守るための行動であると考えられます。皆さんの中で、他にありましたら教えてください。
自分でできる対処方法
上記の中で、ハラスメントを受けても労働者が「何もしなかった」と勤務先が認識した後労働者に対して「特に何もしなかった」場合、傷つき悩んでいる場合の対処方法を考えてみました。
一つ目は事実(実際に言われたことや起きたこと)が何で、自分がその事実から考えたこと(認知)が頭の中で混同していることがあります。頭の中にあるそれらを書き出し、不安や感情を言語化して整理すると気づきが得られます。例えば、「お前は何をやらしてもダメな人間だ」と大声で言われたとします。それに対して解雇されるのではと不安に思ったとします。この場合事実は、「お前は何をやらしてもダメな人間だ」「大声で」言った。
です。認知は「解雇される」「不安に思った」です。その結果自分ができることと自分では解決できないことが見えてきます。次の行動を起こせると思います。
二つ目は「自分が憂鬱なのは〇〇のせいだ」「こうすれば良かった」等くよくよ考え、悲しみ・怒り等をどこにも発散できず、いつまでも同じことをぐるぐる考えている(反芻思考)と体がだるくてやる気が出ない、眠れない等いくつかの症状が現れてきます。「気にしないようにしょう」「考えない、考えない」と思うこと自体それに捉われ考えているということです。
イライラするのは自己防衛本能です。これには自律神経が大きくかかわっています。自律神経はストレスが加わると乱れてきます。この自律神経を長く乱さないように深呼吸(複式呼吸を意識し、鼻から息を吸い口からゆっくり吐きます。今吸った空気がお腹の中に入り、吐いたとき出ていくのを、感じながら)をして放置せず呼吸を整えることが大切です。
日々私たちは、自律神経が乱されやすい環境で生活しています。ハラスメントでなくても何気ない言葉に悩まされたり、失敗したり、天気や気温等外因によっても乱されやすいです。このような時メンタルが不安定な状態になっています。自律神経の乱れを小さくし、安定した状態に戻すことは心の健康には大切です。自分がやりやすいもので、持続できるものが良いと思います。こんなことでと思われるかもしれませんが、最初はできなくても継続は力なりだと思います。普段から柔軟に戻せるようにしなやかにすることで安定した状態に近づけられます。心が元気になると身体も元気になります。
最後に
ハラスメントは一度だけ、継続する場合、その程度も様々あります。
相談しない理由をいくつか考えてみましたが、ケースバイケースにより自分で解決できる場合もありますが、ハラスメントは個人の問題ではなく、組織の問題です。本来ならば組織として、相談しない理由を払拭できるような信頼できる対策が必要です。しかし、現状では統計で現れたような結果から本人がメンタル不調にならない対策を簡単に述べました。
その他対処方法はいろいろあります。ご自分で探すのも良いと思います。
ハラスメントを受け、相談することをためらっていたら、自分を守るために、メンタル不調にならないように自分ができる対処方法を実行してください。自分を守れるのはあなただけです。メンタル不調だけでなく、最悪の事態を避けることを願っています。
(統計は厚生労働省の令和5年度厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書より)
著者:SRCパートナーコンサルタント 西村 多加枝

社会保険労務士
ハラスメント防止コンサルタント
産業カウンセラー
キャリアコンサルタント


