ハラスメント防止対策は、職場環境改善と併せて実施することが効果的
第1回のコラムでは、パワハラを防止するためには、形式的な雇用管理措置を実施するだけでなく、本質的要因を解消する「Big-Why」(真の目的)を認識した対策に取り組む必要性があるとお伝えしました。では、具体的にどうすればよいでしょうか。
ハラスメントに関する職場の特徴と実施した方がよい取組とは
令和2年度の厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査(労働者等調査)」によると、パワハラ・セクハラともにハラスメントの発生している職場の特徴として、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」、「ハラスメント防止規定が制定されていない」、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」、「残業が多い/休暇を取りづらい」等について、ハラスメントを経験した者と経験しなかった者の差が特に大きくなっています。
そして、勤務先が今後実施した方がよい取組としては、「特にない」の49.9%を除くと、「コミュニケーションの活性化や円滑化のための取組」が30.4%と最も高く、次いで「職場環境の改善のための取組」が28.7%と高くでています。
職場のハラスメントの発生要因は複合的、対策も複合的に取組むことで効果をあげる
毎日長い時間を過ごす職場で、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」となると仕事をしていくうえで差し障りが生じるのは当然でしょう。では、それだけでハラスメントの発生要因になるのでしょうか。仕事を進めていくうえでコミュニケーションは重要ですが、単一の要因だけでハラスメント行為が発生することは少なく、多くの要因が関係していると私は考えます。
人手不足や売り上げ減少、ミスの多発、クレーム発生、長時間労働の状態で働いていると心とからだが疲弊していきます。そのため、ちょっとしたことで厳しい口調になったり、部下や同僚をサポートする余裕がなくなっていくのではないでしょうか。
コミュニケーションを活性化させることも大事ですが、併せて様々な視点から職場環境の改善に取組む必要があります。
職場環境改善は、労働衛生3管理で
労働衛生の3管理とは、作業環境管理、作業管理及び健康管理の3管理を指します。
作業環境管理には、ハード面として暑さ寒さ、騒音、粉塵、有害化学物質、休憩・休養設備や職場のレイアウト等があります。ソフト面では、上司の指導方法、上司の公平な態度、職場の相互支援、対人関係等があります。
作業管理には、時間管理、仕事の量、裁量度、仕事の意義、作業姿勢、役割明瞭さ、属人化防止、マニュアルの有無、公正な人事評価等があります。
健康管理には、健康診断、長時間労働の面接指導、ストレスチェック、相談窓口、キャリアデザイン、ハラスメント対応等があります。
ハラスメント防止対策は、コミュケーション活性化だけでなく、併せて職場環境の改善を検討することをお勧めします。
労務管理の専門家である社会保険労務士にご相談ください。
このコラムは、2022年3月22日配信のメルマガに掲載されたものです。
著者:SRCハラスメント防止コンサルタント 沼田博子
大阪府出身。関西大学大学院商学研究科卒
流通業、人材派遣業を経て社会保険労務士として開業
1996年 社会保険労務士事務所 開業
2001年 有限会社マンパワーマネジメントシステムズ設立 取締役就任
2015年 一般社団法人SRストレスチェック支援センター
(現、未来のワークデザイン研究所)設立 代表理事 就任
2016年~2020年 関西大学会計専門職大学院 非常勤講師
2017年 社会保険労務士法人ハーネスに組織改編 代表就任
保有資格
特定社会保険労務士、シニア産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント、キャリアコンサルタント、アンガ―マネジメントファシリテーター、
アンコンシャスバイアス認定トレーナー、プロティアン認定ファシリテーター
衛生工学衛生管理者、公認不正検査士、リフレクションカード・トレーニングプロ
主な業務内容
・労務相談
・心と身体の健康管理(メンタルヘルス・ハラスメント対応含む)
・多様な働き方制度設計(週休3日制、短時間正社員、テレワーク、再雇用制度)
・両立支援(育児・介護・疾病等)のための人事制度構築
・賃金・人事評価制度見直し(ジョブ型、同一労働同一賃金対応)
・高齢者活用(キャリアデザイン研修)