職場におけるモラルハラスメントを防止するために

相談が急増しているモラルハラスメント

2022年4月にすべての企業にハラスメント防止措置の義務化が施行されてから、ハラスメントに対する意識が高まりました。そして今、新たな課題としてモラルハラスメントの相談件数が急増しています。

相談内容は様々ですが、「ハラスメントかどうかはっきりしないけれど、退職者が増えている」「明確なハラスメントではないかもしれないが、職場での休職者が増加している」といった、困惑と不安の声が多く聞かれます。このような状況に対し、私たちは「モラルハラスメントの可能性があり、徹底した調査が必要です」とアドバイスしています。

職場でのモラルハラスメントは、見えにくい形で発生し、労働者の精神的健康に深刻な影響を与えることがあります。言葉の暴力、過小評価、無視など、精神的圧迫や人格の否定を含む行為は、企業にとっても大きな損失をもたらします。そのため、モラルハラスメントの存在と影響を理解し、適切に対処することが、経営者と労働者双方にとって不可欠です。

職場におけるモラルハラスメントの特徴

 モラルハラスメントとは、「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることをいいます。パワハラと同様に、うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあります。」と厚生労働省の「こころの耳」に記載されています。

私が社労士として受けた多くの相談から見えてくる職場におけるモラルハラスメントの特徴は次の3つです。

  • 同じ職場で、休職者や離職者が続いている。
  • ハラスメント行為がわかりづらい(見えにくい)。
  • 行為者は、上司だけでなく、同僚や部下等の「立場、年齢を問わず全労働者」である。

職場におけるモラルハラスメントの事例

1.相手を認めない、対話しない

相手との対立をはっきりさせない。ため息、近寄って肩をすくめる、冷たい視線

相手がその役割や責任を果たしていないと繰り返し攻撃する。「主任なら○〇すべき!課長なら○〇できるはず!」など

2..相手を孤立させる

「あなたには興味がない」「あなたは部署に存在していない」というメッセージを言葉以外の態度で表す。必要な情報を与えない。長時間、みんなの前で叱る。

3..相手を不安に陥れる

 ダメ出しをするが、具体的に指示をしない。

「どうすればいいですか?」「どうしてですか?」と聞かれても「言わなくてもこれぐらいわかるでしょう!」「自分で考えなさい!」と曖昧な言い方で突き放す。

被害者の後ろで、被害者にだけ聞こえるように舌打ちを繰り返す。

「見えない暴力」が職場や被害者に与える影響

モラルハラスメントは、労働者のストレス増加、生産性低下、職場離脱、職場士気の低下につながります。また、最悪の場合、自殺などの深刻な問題へと発展することもあります。「見えない暴力」が職場や被害者に与える影響は以下のとおりです。

  • 心身の健康への影響

うつ病、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを引き起こす。

  • 自尊心と自信の低下

被害者の自尊心と自信を低下させる可能性がある。

  • 人間関係の悪化

被害者が他人との関係を築くことを避け、助けを呼べなくなる。

  • 生産性の低下

職場の全員が仕事に集中できない。

モラルハラスメントへの効果的な対処方法

モラルハラスメントへの対処には、組織全体での意識改革が必要です。具体的な対処策として以下の3つを推奨します。

  1. モラルハラスメント研修の実施 モラルハラスメントの実態を知り、受けていることを認識する。
  2. 被害者へのサポートシステムの構築: 内部や外部相談窓口への相談、傍観者をなくす。
  3. 職場のハラスメント防止ポリシーの確立 トップのコミットメント、360度評価の導入など。

モラルハラスメント対策のご相談は、SRCハラスメント防止センターへお任せください。

このコラムは、2024年1月22日配信のメルマガに掲載されたものです。

著者:SRCハラスメント防止コンサルタント 沼田博子

大阪府出身。関西大学大学院商学研究科卒
流通業、人材派遣業を経て社会保険労務士として開業
1996年 社会保険労務士事務所 開業
2001年 有限会社マンパワーマネジメントシステムズ設立 取締役就任
2015年 一般社団法人SRストレスチェック支援センター
(現、未来のワークデザイン研究所)設立 代表理事 就任
2016年~2020年 関西大学会計専門職大学院 非常勤講師
2017年 社会保険労務士法人ハーネスに組織改編 代表就任

保有資格

特定社会保険労務士、シニア産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント、キャリアコンサルタント、アンガ―マネジメントファシリテーター、
アンコンシャスバイアス認定トレーナー、プロティアン認定ファシリテーター
衛生工学衛生管理者、公認不正検査士、リフレクションカード・トレーニングプロ

主な業務内容

・労務相談
・心と身体の健康管理(メンタルヘルス・ハラスメント対応含む)
・多様な働き方制度設計(週休3日制、短時間正社員、テレワーク、再雇用制度)
・両立支援(育児・介護・疾病等)のための人事制度構築
・賃金・人事評価制度見直し(ジョブ型、同一労働同一賃金対応)
・高齢者活用(キャリアデザイン研修)

 

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