公益通報者保護法改正への対応とハラスメント相談窓口
6月1日施行の内部通報受付窓口設置義務への実務対応
不正会計、リコール隠しや食品偽装などの企業の不正や不祥事が、内部の労働者や取引先などからの通報で明らかにされたことはご存知の事でしょう。
公益通報者保護法とは、このように公益通報した人が、そのことを理由に解雇などの不利益な取扱いを受けることがないようにする制度です。
労働者を保護するだけでなく、企業にとっても自浄作用を保つために有用なこの制度の取組をさらに進めるため、内部通報者を守る「改正公益通報者保護法」が6月1日施行されます。
公益通報者保護法改正の概要
6月1日からは、301人以上の企業に対し、内部通報受付窓口を設置する等、内部通報に適切な体制が義務付けられることになりました。(ただし、従業員数300人以下の中小企業は努力義務。)さらに、内部調査などを行う担当者には、情報の守秘義務が課せられ、違反すると刑事罰の対象となりました。
通報の対象となる法律とは
通報の対象となる「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」として公益通報者保護法の別表に定められた法律を言い、令和4年5月1日現在、480本あります。
その中で、労働者の働く環境に関わる主なものは、労働基準法、労働安全衛生法、育児、介護休業法、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)、労災法、労働者派遣法等です。
コンプライアンス経営への推進
改正公益通報者保護法において、事業者には、自主的に通報対応の仕組みを整備し、コンプライアンス経営を推進することが期待されています。
通報の仕組みを整備することは、事業者にとって不正・不祥事を防ぎ、従業員のモチベーションを高め、事業者外部への通報による風評リスク等を減少させることにつながります。
消費者庁が作成・公表している民間事業者向けのガイドラインでは、以下の3つの事項が定められています。
①通報対応の仕組みを整備 |
通報の受付・調査・是正措置の実施・再発防止策の策定までを適切に行うため、通報に対する仕組みを整備し、適切に運用することが必要です。事業者内部で通報対応の仕組みを整備するに当たっては、まず通報を受け付ける窓口を設置し、労働者に広く周知する必要があります。 |
②通報に関する秘密保持・個人情報保護の徹底 |
通報に当たっては、通報者や通報の対象となった者(被通報者)の個人情報等を取り扱うこととなります。情報を共有する者の範囲を限定するなど、通報対応に従事する者に通報に関する秘密保持や個人情報保護を徹底させることが必要です。 |
③通報者への対応状況の通知 |
通報への対応状況を通報者に伝えることは、通報者の通報窓口への信頼を確保するためにも必要と考えられます。そのため、ガイドラインでは、通報への対応状況に応じて、例えば、調査を行うか否かに加え、調査結果、是正結果などを通知するよう努めることとしています。 |
内部公益通報受付窓口とハラスメント相談窓口等との併設
内部公益通報受付窓口の設置等について、指針では、「内部公益通報受付窓口を設置し、当該窓口に寄せられる内部公益通報を受け、是正に必要な措置をとる部署及び責任者を明確に定める」とあります。
具体的には、内部公益通報受付窓口については、事業者内部に設置するだけでなく、外部(外部委託先、親会社等)に設置することや、事業者の内部と外部の双方に設置することも可能です。
また、組織の実態に応じて、内部公益通報受付窓口が他の通報窓口(ハラスメント通報・相談窓口等)を兼ねることも可能です。その場合であっても内部通報受付、ハラスメント相談、育児休業・産後パパ育休相談窓口等の受け付ける相談内容を明記及び周知しておくことが必要です。
内部公益通報窓口を総合相談窓口とし、ハラスメント相談窓口だけを外部にも委託すれば総合相談窓口の負担を減らすことにつながります。
ハラスメント相談窓口を外部委託するメリット
内部公益通報窓口は、従業員数300人以下の中小企業は努力義務ですが、ハラスメント相談窓口は、企業規模に関わらず設置しなければなりません。
ハラスメントの相談は、違法かどうかではなく、職場で働く従業員がどのように受け止めているかが問題です。違法でなくても、従業員が活き活きと働ける職場環境であるかモニタリングをし、問題を共有して改善をしていくことが重要です。相談窓口を外部の労務管理の専門家である社労士に委託すれば、従業員は安心して相談しやすくなります。
早めの相談で調査し、迅速に是正対応することで被害を防止できます。その結果、離職防止、生産性向上、企業イメージ向上につながります。
SRCハラスメント防止センターに相談窓口を委託するメリットは、次の3つです。
1.労働諸法令に詳しく、最新の労務管理の知識を有している社労士が窓口担当者
2.豊富な経験、カウンセリング力を持つ担当者で安心
3.適正な価格設定(月額15,000円より)で、継続的なハラスメント対応が可能
ハラスメント相談窓口は、「SRCハラスメント防止センター」にお任せください。
〈参考〉
消費者庁「公益通報ハンドブック」
消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」
消費者庁HP:「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)」
このコラムは、2022年5月20日配信のメルマガに掲載されたものです。
著者:SRCハラスメント防止コンサルタント 沼田博子
大阪府出身。関西大学大学院商学研究科卒
流通業、人材派遣業を経て社会保険労務士として開業
1996年 社会保険労務士事務所 開業
2001年 有限会社マンパワーマネジメントシステムズ設立 取締役就任
2015年 一般社団法人SRストレスチェック支援センター
(現、未来のワークデザイン研究所)設立 代表理事 就任
2016年~2020年 関西大学会計専門職大学院 非常勤講師
2017年 社会保険労務士法人ハーネスに組織改編 代表就任
保有資格
特定社会保険労務士、シニア産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント、キャリアコンサルタント、アンガ―マネジメントファシリテーター、
アンコンシャスバイアス認定トレーナー、プロティアン認定ファシリテーター
衛生工学衛生管理者、公認不正検査士、リフレクションカード・トレーニングプロ
主な業務内容
・労務相談
・心と身体の健康管理(メンタルヘルス・ハラスメント対応含む)
・多様な働き方制度設計(週休3日制、短時間正社員、テレワーク、再雇用制度)
・両立支援(育児・介護・疾病等)のための人事制度構築
・賃金・人事評価制度見直し(ジョブ型、同一労働同一賃金対応)
・高齢者活用(キャリアデザイン研修)