管理職にもっと支援を

管理職の悩みの影にある思い込み

各地でハラスメント防止研修を行っていますが、講師からの一方通行の講演タイプの研修ではなく、受講者のみなさまのナマの声を聞くことを心がけています。

そのような声を聞くと、地域だけでなく、会社規模、業種もさまざまですが、管理職の方たちの悩みは驚くほど似通っています。

「部下を成長させたいが、厳しく指導するとパワハラと言われる。どうしたらよいのか」

細かい点はいろいろありますが、突き詰めるとここにたどりつく、という感じですね。
管理職あるある、と言っていいでしょう。

さて、これを読んでいるみなさんは、この悩みの中にはいくつかの前提が含まれていることにお気づきでしょうか。

  • 厳しく指導しなければ部下は成長しない。
  • 厳しい指導にはパワハラとなりうるもの(どなる、暴言、嫌味、侮辱、長時間の説教等)が含まれる。
  • 相手のためを思って指導しているのに、部下がパワハラだと感じるのは不当だ。自分たちは被害者だ

言っている管理職の方たちは、この前提をまったく疑っていませんが、パワハラ防止を生業(なりわい)としている当方からすると、どれも思い込みで根拠がないものです。

いえ、根拠がないわけではありませんね。
ご自分が若い頃、キャリアの浅い頃、当時の上司から受けていた指導をすべて肯定し、そのようにするとうまくいかない現在の状況がおかしいのだと考えると、このような思い込みになってしまいます。
つまり、根拠はご自分の体験です。

パワハラになる行為を覚えるだけでは、管理職の悩みは解消しない

パワハラ防止研修のご依頼をいただくのは、その会社の人事・労務部門がほとんどです。
また、パワハラ防止研修自体がはじめてという会社も珍しくありません。

そのような場合、研修の目的は「とにかくパワハラ行為をやめてほしい」ということになります。
こういうことをやるとまずいよ、という行為を覚えて、それをやらないようにしてほしい、ということですね。
それ自体は大切なことであり、まずはそこから出発するというのは当然です。

しかし、これだけでは、最初に書いた管理職の悩みは解決しません。

パワハラ防止のために、管理職が知る必要があることは、本来は次のようなことです。

部下をどのように指導したら、部下は成長し、自発的に仕事に打ち込めるようになるのか

この課題を解決するためには、管理職個人個人の体験から出てくる指導法だけでは不十分です。
それどころか、現代の社会には合っておらず、古いやり方をそのまま続けると、害悪になることさえあります。
それがつまり、本人は指導だと思っているけれど、第三者から見るとパワハラ、ということですね。

変化する日本社会の中で、正しい部下の指導方法も変わっている

現在管理職になっている40代50代の方が若い頃とは、日本の人口構成等、社会の成り立ち自体が変化しており、さらにその中でも、労働者の権利意識は比べ物にならないくらい変わっています。
この流れはおそらく逆行することはなく、日本は少子高齢化で若い労働者がますます少なくなり、ひとりひとりの人権意識は高まっていきます。
若い人たちは、そのような変化をすでに体現しており、変化に気づかぬまま古い価値観にしがみついている中高年世代とは、意識の上で大きなギャップがあります。

管理職の方たちに突きつけられている課題は、この変化に気づき、学問的にも根拠があり、より効果のある現代の指導法を身に着けなければならないということです。
しかし、忙しい業務の中でそれを個人の努力でやる、というのは、かなり非現実的ですね。

「正しい部下の指導方法」を会社が管理職に教える必要があるということです。
しかし残念ながら、そこに気づいている会社は少なく、社長や経営層自体も頭が古いままですので、冒頭の管理職の悩みに戻ってきてしまいます。

パワハラを防止するためには、会社が「部下の指導方法」を教える、という管理職への支援をしなければなりません。
もちろん、パワハラを防止するだけではなく、業績へのプラスの効果も大きいでしょう。
会社として取り組むべき課題です。

もうひとつ、管理職を支援するべきテーマがある

実は、ほかにもうひとつ、会社が管理職を支援するべきテーマがあるのですが、長くなりましたので、それは次回のコラムに譲ることにしましょう。
次回、李のコラムは4月のメルマガに掲載されます。少し先ですが、お楽しみに!

このコラムは、2022年2月21日配信のメルマガに掲載されたものです。

著者:SRCハラスメント防止コンサルタント 李怜香

社会保険労務士
産業カウンセラー
ハラスメント防止コンサルタント
健康経営エキスパートアドバイザー

略歴

岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。
1999年 社会保険労務士登録し、李社会保険労務士事務所(現 メンタルサポートろうむ)開業。
2011年 産業カウンセラー登録。
2012年 ハラスメント防止コンサルタント認定。公益財団法人21世紀職業財団ハラスメント防止客員講師に就任。
2013年~2019年 厚生労働省委託事業 パワハラ対策取組支援セミナーに登壇。
2016年~2017年 厚生労働省委託事業にて女性活躍推進アドバイザーとして活動。
2019年 健康経営エキスパートアドバイザー認定。
2020年 栃木県保健衛生事業団ハラスメント相談事業コンサルタントに就任。
2021年 厚生労働省委託事業 職場におけるハラスメント対策総合支援事業 派遣専門家として活動。

主な業務内容

・労務相談
・研修
・セミナー講師
・ハラスメント外部相談窓口
・ハラスメント事案に関するコンサルティング
・ハラスメント事案のヒアリング調査

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