ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の包括)の意味を考える
ハラスメント防止のために、多様な価値観を尊重することが大切と言われます。企業が成長するためにも、多様な価値観、多様な属性の人材を受け入れ、その能力を発揮してもらうことにより、労働力不足を補うことや、新規事業による生産性の向上等につながることが期待されています。
「多様性」とは、性別や年齢、国籍や障害の有無、性的指向、雇用形態、価値観等、幅広い意味があり、それぞれが持っている特性(違い)を互いに受け入れて尊重することが「多様性の包括」ということになります。
しかし、実際は、この言葉のみを聞いて理解、実行ができるような簡単なことではないと考えます。「リンゴよりみかんが好き」という「違い」であれば、人の好みはそれぞれと、受け入れることは難しくないかもしれません。しかし、そもそも「違い」であることが理解できず、相手の言動が、自分のことを嫌いで意地悪をしているからだと思い込むと、相手を避けたり、嫌いになったりすることがあります。意見の「違い」をお互い受け容れず、相手が間違っていると責めるときもあります。身近な関係性、夫婦や家族、友人や恋人同士の間でも「違い」はたくさんありますが、「違い」を認識したとき、争いを避けるために我慢をしたり、自分の正しさを押し付けたりすることもあります。
「違い」は「間違い」ではない
自分と「違う」ことは「相違」であって、「間違い」や「不正解」ではありません。だから「違い」を否定したり排除したり嫌ったりする必要はないはずです。
「違い」があるからこそ、多様な意見を自由に言いあうことで、よりよい解決策やアイディアが生まれる機会となります。意見が違うことを悪いことと考えずに、お互いに「私はこう思う」と「多様な」考えを自由に言い合える関係性を築くことが大切です。
むしろ全員が「同じ」であることは不自然です。
高校生の留学体験
知り合いの娘さん(高校生)が学年でカナダに2週間の留学をしたという話を聞きました。語学とSDG’sの学習が目的とのこと。カナダでの生活は、日本との違いに驚きや戸惑いが多かったけれど楽しい体験になったそうです。カナダは移民が多く、民族や人種、宗教や言語も様々で、多文化主義を導入しているとのこと。
日本との違いだけではなく、カナダ国内でも「違い」がたくさんあることを、現地に身を置き体験することで「多様性」について、考えることができたようです。
英語しか話せない人とフランス語しか話せない人と、ほとんど日本語しか話せない自分と、みんなで一緒にバスケットボールを楽しむことができたという話が印象的でした。
その高校生にとって「違い」は排除されるべきものではなく、自然に受け入れることができるものでした。
自分の中の多様性に気づくこと 考え続けること
自分の中にも「多様性」があります。相手によって自分の役割が変わると、その時々の視点も変わってきます。
得意なこともあるし、劣等感を抱いてしまうものもあります。弱さや狡さを、本当の自分ではない、心がけや努力が足りないと否定していると、それは他人への許容度の低さになって表れるかもしれません。
私たちは、通常、自分の中の「正解」や「間違い」「偏見」を無意識に抱えていることに気がつきません。自分に対しても不寛容な思いを持つことがあります。
多様性を受け入れるために「違い」を自覚することから始めてはいかがでしょうか。
「違和感」があるのは「違い」に気づいた時です。「普通」とか「当たり前」と思い込んでいたことと違うものに出会ったときに「違和感」を覚えます。「違い」を「間違い」として排除せずに、「違い」と向き合い、「多様性」を見つけ、違う価値観に出会う新しい体験にしていきましょう。 小さな引っ掛かりがあれば、それについて考え続けていくことが多様な価値観を受け入れることにつながるかもしれません。それぞれの人が自分も他人も受け入れられることで、今よりももう少し寛容な社会になることを期待しています。
少し立ち止まり、意識して振り返る、言い方や心持ちを変える努力をしてみてはいかがでしょうか。
著者:SRCパートナーコンサルタント 五百川 篤子
略歴・資格等
山口県生まれ。山口大学人文学部卒業。
2015年 社会保険労務士登録
2016年 医療労務コンサルタント
2017年 いおがわ社会保険労務士事務所開業
2018年 キャリアコンサルタント登録
2018年~日本年金機構山口年金事務所にて年金お客様相談窓口対応
2019年 特定社会保険労務士の付記
2020年 山口県働き方改革アドバイザー登録
2020年~2022年 厚生労働省委託事業働き方改革サポートオフィス山口にて専門家派遣
2020年~全国社会保険労務士会連合会 企業主導型保育施設への労務監査 監査員
2020年 労働者健康安全機構 治療と仕事の両立支援コーディネーター
2021年~厚生労働省委託事業にて女性活躍推進アドバイザー
2023年 ハラスメント防止コンサルタント(公益財団法人 21世紀職業財団)