ハラスメント相談窓口を外部委託するには

ハラスメント相談窓口担当者の悩み
ハラスメント防止研修等で多くの企業を訪問しますが、中小企業では研修の担当者がハラスメント相談窓口の担当者を兼務していることも多く、いろいろな悩みをお聞きします。
「なんの訓練も受けていないので、どのように相談を受けていいのかわからない。内線電話が鳴ると、心臓がバクバクする」
「相談に来た相手を快く思っていなかったので、その気持が顔に出ていなかったか、不安だ」
「どう考えても、ハラスメントというより、相談者に問題があるような相談が多い」
「相談が多すぎてバーンアウト気味」
こんな声をいままで聞いていました。
セクハラ・マタハラについては相談窓口の設置が義務付けられており、さらに、昨年のパワハラ防止法(労働施策総合推進法)の中小企業への適用で、ハラスメント相談窓口の設置を行った企業が多かったようです。
ところが、経営者は「とりあえず、総務部から適当に出しておいて」程度の認識で、この業務の難しさ、負担の重さを理解しておらず、担当者がひとりで悩んでいるという状況がよく見られます。
これでは、実際にハラスメント相談が来たときの対応も不安ですし、相談担当者の仕事へのモチベーションも下がるばかりです。
このような状況を打破するには、どうしたらよいのでしょうか。
中小企業ほど、外部相談窓口委託がおすすめ
ハラスメントの相談をしたい人にとっても、社内の相談窓口は、気軽に相談できる場所ではないこともよくあります。
これについては、外部相談窓口にご相談いただいた方から、社内の窓口に相談しづらい理由として、このような話を聞いています。
「小さい会社なので、社内窓口に相談したら、会社中にバレバレになりそう」
「会社に相談すると、加害者から報復されるのではないかと怖い」
「課長にパワハラを受けていて、部長に相談したが、なにもしてくれない」
とくに中小企業では、次のような点で、ハラスメント相談窓口が機能していないことがよくあります。
- ハラスメント相談窓口がきちんと周知されておらず、従業員がどこに相談したらよいかわからない。
- 担当者がハラスメント相談対応の訓練を受けていない。
- 担当者がハラスメント行為者に近い人物だったり、担当者自身がハラスメント行為をしてしまっている。
- 担当者が秘密を守れそうもない。
- 担当者と日頃仕事で顔を合わせているので、かえって相談しづらい。
対策をすれば解決できる部分もありますが、「人数が少なく、社員同士が常に顔を合わせている」という中小企業特有の事情から出てきている問題の場合は、解決するのが難しいことがほとんどです。
ところが、ハラスメント相談窓口の外部委託をおすすめすると、「うちのような小さい会社では、そこまで必要ない」という答えが返ってきます。
しかしこれは逆で、中小企業ほど、ハラスメント事案の解決が難しく、起こってしまった場合の影響が大きいので、問題が小さいうちに対応する必要があります。
企業規模が大きい場合、配置転換等でとりあえず当事者同士を引き離すことができますが、中小企業の場合は、配置転換や転勤させる先がありません。
また、ひとりの従業員のパフォーマンスが業績に直接影響する中小企業の場合、被害者・行為者・同僚のうちだれか、または全員がモチベーション低下することにより、業績低下にすぐに結びついてしまいます。
さらに、だれかが休職・退職してしまったときのダメージも、企業規模が小さいほど大きくなります。
従業員が相談しにくい内部窓口だけに頼っていては、ハラスメント事案が大事になるまで放置され、モチベーション低下だけではなく、従業員の休職・退職、場合によっては裁判沙汰になることも考えられます。
そのような場合の損失を考えると、リスクヘッジとして、外部相談窓口の費用を捻出することは合理的な判断でしょう。
外部委託のときのチェックポイント
ハラスメント相談窓口の外部委託を考えた場合、どこでもよいわけではありません。
次のようなチェックポイントをクリアできた業者に依頼することが大切です。
1.労務管理としての「ハラスメント事案対処」がわかっている
ハラスメント相談を受ける場合、ただ相談に来た人の話を聞いて、それを記録すればいいわけではありません。
その後、会社ではハラスメントが実際にあったのかどうかの判断をしなければなりませんが、そのときの判断材料となる事実を聞き取る必要があります。
相談者は、自分の話したいことだけを話そうとしますが、その話を聞いているだけでは必要な事実を確認できないので、相談担当者からたくさんの質問をする必要があります。
短い時間で要領よく、そのような質問をするには、心理カウンセリングの技術だけでは不十分です。
また、ハラスメント事案は個人の考え方・感じ方の問題ではなく、会社の労務管理の問題としてとらえる必要がありますが、心理カウンセラーが担当した場合、相談者、または行為者の「認知の歪み」を正そうという、ふだんの業務のクセが出てしまうことがあります。
常に個人の問題ではなく、会社全体の問題としてとらえるという相談担当者の視線が、相談の聞き方にも影響してきます。
労務管理について、深い知見を持っている社会保険労務士が適任でしょう。
2.相談担当者が傾聴の技術を持っている
ハラスメント相談をする人の多くは、精神的に不安定になり、疑心暗鬼に陥っています。
会社としては、事実関係だけでなく、相談者がなにを望んでいるのか知ることで、その後の対策に役立てることができますが、相談担当者が信頼されない場合、本音が出てこず、後出しで相談者の要望が出てきて、適切な対処ができないことがあります。
初対面の相談者にどうやって信頼されるかというと、「相手の感情によりそって話が聴ける=傾聴ができる」からです。
弁護士や社労士に依頼すると、通常は傾聴の訓練を受けていませんので、警察の事情聴取のように問い詰めたり、場合によっては相談者に説教してしまったり、という不適切なヒアリングになってしまうことがあります。
こうなると、相談者は、相談担当者だけでなく、会社にも不信感をもってしまいます。
そうならないためには、カウンセラー等、傾聴の技術を身に着けている担当者が多く在籍している業者を選ぶ必要があります。
3.相談窓口の役割を「一次対応のみ」と限定している
相談者は、それまで「こんなことを相談していいのだろうか」という迷いや、「社内の人に相談したのにまともに受け取ってもらえない」という不満を抱えています。
傾聴ができる相談窓口担当者は、相談者のそんなつらい心情を癒やし、「きちんと話を聞いてもらえた、自分自身を受け止めてもらえた」という満足感を与えることができます。
そうなると、相談者が相談担当者に心理的に依存してしまう、ということが起こりがちです。
相談担当者を自分の「味方」ととらえ、会社に対しての対応策のアドバイスを求めてくることが、よくあります。
社労士にしろ、心理カウンセラーにしろ、ふだん相談を受けている職業の人は、相手からの信頼を感じ、相手から要望されると、つい応えてあげたくなります。
職業的な傾向でなくても、人間としては当然の心理です。
しかし、そこで、相談者からの言いなりにアドバイスを与えていると、会社と相談者がその後対立する場面になった場合、「利益相反」の問題が起こります。
つまり、会社からすると「相談者に入れ知恵をして、会社が不利になるようにしている」ということになるわけですね。
このようなことにならないために、「相談担当者の役割は一時対応(相談を受付け、内容や要望を整理し、会社に伝える)のみ」ということを、きちんと表示している業者に依頼する必要があります。
「相談者に解決のためのアドバイスをします」と謳っている業者は、一見親切のようですが、ハラスメント事案の実際の解決にあたったことがなく、経験不足の場合が多いのです。
4.サービス内容がニーズに合っている
外部相談窓口の大きな利点は、早朝・夜間・土日祝日等、会社の社員では対応しにくい時間に相談に応じてくれることです。
平日のいわゆるオフィスアワーのみの対応では、相談したいときには、会社を休んだり、遅刻早退をする必要があり、相談の敷居が上がってしまいます。
現在、外部相談窓口として対応しているところでも、相談の希望日・時間は、夜間や週末に集中しています。
夜間や週末に対応してくれる業者を探しましょう。
また、相談の予約方法や、相談を受けるときの方法も、複数用意しているほうが、相談しやすくなります。
予約を受ける側からすると、オンライン予約やメールに限ったほうが便利なのですが、それでは、スマホの操作になれていない相談者を最初からはじいてしまうことになります。
また、相談を受けるときも、電話・メールだけでなく、オンライン(Zoom 等)にも対応しているほうが、より相談しやすくなり、相談者から情報を得やすくなります。
もちろん、適切な料金であるというのも、大きなポイントです。
電話をかければ担当者が待機していて、いつでも相談を受けられる、というのは、相談者しやすいのは確かですが、マンパワーを要するため、料金も高くなりがちです。
予約が必要な方式は、料金が比較的安価に設定されているだけでなく、相談者もいったん時間を置いて頭を冷やし、事実関係を考え直すことができるという利点もあります。
きちんと訓練を受けた担当者を抱えている場合、当然それなりの料金になりますので、あまりに安いところは、素人が対応している場合がありますし、有資格者を安く使っているという場合も、あまり長続きしないでしょう。
SRCハラスメント防止センターの外部相談窓口は4つの条件すべてを満たしています
SRCハラスメント防止センターの外部相談窓口は、次のような特徴があります。
相談を受けるのは、すべて社労士であるとともに、心理職の資格や、ハラスメント防止コンサルタントの資格を持っています。
労務管理に知見・経験があるだけでなく、傾聴の技術を持ち、相談者の気持ちによりそってお話を聞くことができます。
労務管理の専門家として、相談後のハラスメント事案の対処方法をよく理解しています。
そのため、相談者から必要な情報をきちんと得ることができます。
相談窓口の役割を「一次対応のみ」としており、利益相反の問題を起こしません。
土日・夜間の相談にも対応しており、予約方法や、相談方法は複数用意しているため、相談したい方のニーズに応えることができます。
事業継続とお客様の利便のバランスをとった、適切な料金体系です。
外部相談窓口の委託をお考えの場合は、SRCハラスメント防止センターをご利用ください。
このコラムは、2023年4月20日配信のメルマガに掲載されたものです。
著者:SRCハラスメント防止コンサルタント 李怜香

社会保険労務士
産業カウンセラー
ハラスメント防止コンサルタント
健康経営エキスパートアドバイザー
略歴
岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。
1999年 社会保険労務士登録し、李社会保険労務士事務所(現 メンタルサポートろうむ)開業。
2011年 産業カウンセラー登録。
2012年 ハラスメント防止コンサルタント認定。公益財団法人21世紀職業財団ハラスメント防止客員講師に就任。
2013年~2019年 厚生労働省委託事業 パワハラ対策取組支援セミナーに登壇。
2016年~2017年 厚生労働省委託事業にて女性活躍推進アドバイザーとして活動。
2019年 健康経営エキスパートアドバイザー認定。
2020年 栃木県保健衛生事業団ハラスメント相談事業コンサルタントに就任。
2021年 厚生労働省委託事業 職場におけるハラスメント対策総合支援事業 派遣専門家として活動。
主な業務内容
・労務相談
・研修
・セミナー講師
・ハラスメント外部相談窓口
・ハラスメント事案に関するコンサルティング
・ハラスメント事案のヒアリング調査