企業に求められるカスタマーハラスメント対策

顧客からの不当な要求や暴言・暴力など、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)は、対応する労働者や企業にとって深刻な問題となっています。

連合の調査結果

2022年12月16日、連合(日本労働組合総連合会)が「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」の結果1を発表しました。これによりますと、 「格差、コロナ禍など社会の閉塞感などによるストレス」や「過剰な顧客第一主義の広がり」などを背景に、カスタマーハラスメントの発生件数が増加し、深刻化していることがわかります。また、その対策として、「発生時のサポート体制」や「被害者へのケア」が必要であることも強く示されています。

パワハラ防止指針では

2020年6月1日(中小企業は、2022年4月1日)から労働施策総合推進法が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。

義務とされた措置の具体的な内容(周知・啓発、相談体制整備、事後対応など)については、いわゆるパワハラ防止指針2において示されているわけですが、この指針では、カスタマーハラスメントについても、以下のような雇用管理上の配慮を行うことが望ましいとされています。

⑴ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

⑵ 被害者への配慮のための取組
(被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等の取組)

また、こうした行為への対応に関する「マニュアルの作成」や「研修の実施」等も、被害を防止するために有効な取組として示され、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも効果的とされています。

このことから、2022年2月には、「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル」3が厚生労働省から発行されています。このマニュアルを叩き台として、業種・業態ごと、あるいは企業ごとに、実情に即したマニュアルを作成するとよいでしょう。

カスタマーハラスメント対策の意義

実際、カスタマーハラスメント対策に積極的に取り組んでいる企業では、以下のような声が聞かれています。(リーフレット「カスタマーハラスメント対策に取り組みましょう!」4より)

「対応方法を明示することで従業員が働きやすくなりました。」

「会社としてカスタマーハラスメントに対する姿勢を示したことで従業員に安心感が生まれました。」

「会社にとって好ましくない客が、来にくくなりました。」

職場環境をよくすることで離職防止にもなるなど、企業がカスタマーハラスメント対策を進めることには、大きな意義があります。各企業や業界団体などには、マニュアル作成、相談体制整備など、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいところです。

一方、顧客としての私たち一人一人も、自らの行為がカスタマーハラスメントになっていないか、意識することも必要ではないでしょうか。5

このコラムは、2023年1月20日配信のメルマガに掲載されたものです。

著者:SRCパートナーコンサルタント 押野りか

詳しいプロフィール

社会保険労務士(岡山県社会保険労務士会 会員) 
ハラスメント防止コンサルタント、ハラスメント防止研修客員講師(公益財団法人 21世紀職業財団 認定)
アンガーマネジメント ファシリテーター (日本アンガーマネジメント協会認定)
アンガーマネジメント ハラスメント防止アドバイザー(同上)
アンガーマネジメント トレーナー(同上)

略歴

岡山県生まれ。
広島大学附属福山高等学校卒業。
岡山大学文学部卒業。
2010年 社会保険労務士登録、押野労務サポートオフィス開業。
2012年~2014年 倉敷労働基準監督署 非常勤職員として勤務。
2014年~2015年 はじめての社労士入門講座(はぁもにぃ倉敷)を担当。
2014年~2019年 岡山県社会保険労務士会 労働条件審査 監査員として活動。
2015年~2017年 ユーキャン社会保険労務士講座 非常勤講師として教室講義を担当。
2015年~現在 岡山県社会保険労務士会 学校向け出前講座講師として活動。
2018年~2019年 岡山県委託事業にて女性活躍・WLB(ワーク・ライフ・バランス)アドバイザーとして活動。
2019年~2020年 公共職業訓練 総務・経理事務課を担当。
2019年~現在 岡山働き方改革推進支援センター登録専門家として活動。
2020年~現在 全国社会保険労務士会連合会 企業主導型保育施設への労務監査 監査員として活動。
2022年 公益財団法人21世紀職業財団 ハラスメント防止コンサルタント認定、ハラスメント防止客員講師に就任。
2022年 新見公立大学 非常勤講師に就任。

主な業務内容

・就業規則作成・変更
・労務相談
・セミナー講師


脚注

  1. https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20221216.pdf
  2. https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf
  3. https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/cusuhara_manual.pdf
  4. https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/cusuhara_leaflet.pdf
  5. https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/cusuhara_poster.pdf

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